「私って、割とどこでも生きていけるかもしれない」――そう笑顔で語るのは、岐阜県出身の神田さん(22歳)。高校卒業後はフリーターとして飲食、グループホームの夜勤、リフォーム工事まで幅広く経験してきた彼女にとって、リゾートバイトは今年始めたばかりの新しい挑戦です。
1回目は広島・宮島。それがすっかり気に入って、2回目に選んだのが瀬戸内海に浮かぶ島、広島県・大崎上島の温泉宿「清風館」でした。職種は、ほぼ未経験から飛び込んだ調理補助。寮の窓の向こうには一面の海――。離島でのリゾートバイトのリアルな声を、たっぷり伺いました。
| お名前 | 神田さん |
| 年齢・性別 | 22歳・女性 |
| 普段の生活 | 岐阜県出身。高校卒業後はフリーター(飲食・夜勤・リフォーム等を経験) |
| リゾートバイト時期 | 2026年9月~11月末(約2ヶ月半の予定)※取材時は約2週間目 |
| エリア・施設 | 広島県・大崎上島「清風館」 |
| 職種 | 調理補助 |
| リゾートバイト歴 | 今回が2社目(1回目は2026年5~7月・宮島) |
「生活費がほとんどかからない」――2回目も広島を選んだ理由
リゾートバイトの存在自体は、4年ほど前から友人の話で知っていたという神田さん。北海道や沖縄といった人気エリアの話をよく聞いていたなかで、実際に動き出したのは今年のこと。数ある働き方から、なぜリゾートバイトを選んだのでしょうか。

── なぜ、リゾートバイトにしようと思ったんですか?
やっぱり、生活費がほとんどかからないのが大きくて。寮付きは絶対条件で探しています。今回は調理補助なんですが、出勤日は1日3食つくんです。もともと1日2食だったのに、まかないで3食食べちゃってます(笑)。
“寮付き・食事つき”で生活コストを抑えられること。それがリゾートバイトを選ぶ一番の理由でした。1回目に広島・宮島を選んだのは、実は「岡山で探していたら案件がなくて、隣の広島でいっか」という、ほぼ成り行き。ところが――
── 2回目も広島にしたのは?
1回目に行ってみたら、広島、いいなと思って。それで2回目も広島で探しました。広島は、リゾートバイトで初めて来た土地だったんですけど、すっかり好きになって。
偶然の出会いが、“また来たい土地”に変わった――。神田さんにとって広島は、リゾートバイトがくれた最初の贈り物でした。見知らぬ土地への抵抗は「割とない方」。それでも、初めてのリゾートバイトの前には不安もあったといいます。
── 初めての時、不安はありましたか?
ワクワクと不安が半々くらいでした。不安だったのは、人間関係ですね。地元でバイトに通うのと違って、完全にその土地に住んで、仕事もプライベートも知らない人たちと、という状況で。合わない人がいたら3ヶ月ずっと一緒で大変だろうな、とか。でも、心配性な反面「なんとかなるでしょ」という楽観的なところもあるので、行くって決まったし、とりあえずやってみるか、と。
清風館での“ある一日”:朝5時起き、中抜けを挟んで夜8時まで
神田さんの一日は、早朝に始まります。寮から職場へは、同じ職場の方が車で送り迎えをしてくれるスタイル。午前と午後に分かれた、“中抜け”のある勤務です。
| 起床(5:00) | 朝5時に起床、準備。6時前に同僚が車で迎えに来てくれる |
| 午前勤務(6:00~10:30) | 調理補助。早いと10時~10時半ごろに終了 |
| 中抜け(~16:00) | いったん寮へ。自由に過ごせる休憩時間 |
| 午後勤務(16:00~20:00) | 再び車で送ってもらい、夜8時まで勤務 |
| 帰寮~就寝(20:05~23:00) | 車で帰寮。シャワー・夕食のあと、23時には就寝 |
勤務は週5~6日、月の休みは7日ほど。シフトは固定で、早番・遅番の切り替えはありません。朝5時起き・夜11時就寝という、とても健康的な生活リズムです。

── 忙しい時間帯はありますか?
出勤直後は、1日のやることをスタートさせるので少し慌ただしいです。でも、この前のシルバーウィークは忙しいと思っていたんですけど、意外とそうでもなくて。むしろ早く仕事が終わって、残りの時間が暇、みたいなことの方が多いかもしれないです(笑)。昼のランチ営業はなくて、朝と夜だけなんです。
── 調理場、大変じゃないですか?
もともと料理が得意じゃなくて、ほぼ未経験で行ったので。キャベツの千切りや玉ねぎの薄切りは、今でもちょっと時間がかかります。あと最初は、1日の流れを覚えるのに必死で。道具の場所、食材がなくなったときの在庫・倉庫の場所……覚えることが多くて。でも、皆さんすごく優しくて。何回聞いても優しく答えてくれるので、逆に気持ちが楽になって、覚えやすかったです。
「調理場はもっと厳しいイメージだった」という神田さん。実際は想像とまったく違っていました。
神田さん怒号が飛び交うのを想像してたけど、全然で。ずっと穏やかな時間が流れているんです。
手が空けば動画を見たり、みんなでおしゃべりしたり、余った料理をすすめてもらったり。「包丁を使う毎日のおかげで、プライベートで料理するハードルも下がりそう」と、仕事が暮らしに還ってくる実感も芽生えていました。
お金のリアル:時給より“行きたい気持ち”を優先した2回目
「みんな一番知りたいところ」のお金の話。取材時はまだ初給与の前でしたが、条件への向き合い方が、神田さんらしいものでした。
| 時給 | 条件面より「もう一度広島へ」の気持ちを優先して応募を即決 |
| 食事 | 出勤日は3食支給(夜は調理場のまかないを含む) |
| 寮費 | 負担なし(寮付きが応募の絶対条件) |
| 勤務 | 週5~6日/月の休みは7日ほど |
| 支出 | 周囲にコンビニがなく、無駄遣いが激減。かなり節約できる環境 |
── 時給は気にしなかったんですか?
「広島にもう一回行きたい」という気持ちが一番にあったので。今回は時給の面はあまり見ずに応募しました。
数字より、“また行きたい”という気持ちを優先する。それでも寮費はかからず、食事は3食つき、周囲にコンビニもないため、「無意味にふらっと買いに行くことがなくなって、かなり節約できる」。使う場所がないからこそ、自然とお金が貯まる環境でした。
── 貯めたお金の使い道は?
友人に会いに行くのに使いたいですね。旅行や食べることが好きで。実は、ピースボート(船で世界一周)に2回乗ったことがあって。1周3ヶ月半で、全国から人が集まるので、船を降りたあと、その友達に会いに行くのをよくやっているんです。今の私の旅は、観光地というより“人を中心に”という感じで。
世界一周の船旅を2度経験し、各地にできた友人を訪ねて旅する――。リゾートバイトで貯めたお金は、神田さんにとって“人とのつながり”をたどる旅の原資になっていました。
寮の窓いっぱいの海。休日は“地図を見ない散歩”
今回の勤務地・大崎上島は、フェリーで渡る瀬戸内の島。神田さんが「当たりだ」と感じたのが、寮そのものでした。
── 寮はどうですか?
寮が、いいスポットなんです。部屋の窓から海が見えて。すりガラスじゃなくて、目の前がもう海で。起きた瞬間に「当たりだ」と思いました。天気がいい日は、ベランダに出ると月や星空がすごく見えて。カーテンを閉めなくてもいいくらいです(笑)。



ホテルはいい景色でも寮は地味な場所……ってよく聞くけど、全然そんなことはなかったです!
休みの日は、月に7日ほど。その過ごし方も、神田さんらしいものでした。
── 休みの日は何を?
最初の休みは、自分が住む場所の近所ってどんな感じなんだろう、と思って、気の向くままに散歩しました。知らない土地を、あえて地図を見ずに歩くのが好きなんです。景色を見て、写真を撮って。自然が好きなので、景色がいいに越したことはないなって。
1回目の宮島では、現地で友人もたくさんでき、仕事終わりに厳島神社を眺めたり、一緒に市内へご飯や飲みに行ったり、お祭りに出かけたりもしたそう。今回の清風館は調理補助が自分ひとりで、同僚とは親子ほど年齢が離れているため、「友達づくりというより、島の人たちと穏やかに島暮らしをする感じ」。その土地ごとの楽しみ方を、自然体で見つけていました。
仕事終わりには、施設内の温泉に無料で入れるのも魅力。寮から温泉へは予約制のバス(一律200円)を使うため、「毎日だと塵も積もるな」と、今は週1~2回に。こうした“暮らしの中の小さな工夫”も、リゾートバイトのリアルです。
行く前と実際のギャップ、そして気候という“誤算”
行く前のイメージとのギャップを尋ねると、神田さん独特の“構え方”が返ってきました。
── イメージと実際で、ギャップは?
私、何か始める前に一番マイナスなことを想定して挑むタイプなんです。だから基本的に、いいギャップしかなくて(笑)。調理場で怒号が飛び交うとか、包丁さばきが下手すぎて毎日叱られるとか、日の当たらない場所かな、とか。最低ラインを想像していったので、仕事も職場もすごく良くて、交通の面以外は本当に恵まれているなって思いました。
唯一「交通の面」だけは、免許を持たない神田さんにとって課題でした。寮からコンビニまで徒歩40分、街灯のない道やイノシシが出るという道もあり、「電動自転車があれば全然違うんだろうな」と実感。もう一つの“誤算”が、気候です。
── 服装で、想定外だったことは?
服の準備が一番「どうしよう」でした。広島とか西日本ってあったかいイメージで。1回目の5月に上着を持たず、薄手の長袖と半袖ばかりで行ったら、ずっと肌寒くて。「あれ、思ってた感じと違う」って。逆に今回は、島の人に「ここは全然寒くならないよ」と言われて。コートやダウンを3着も持ってきちゃったので、そんなに要らなかったかな、と(笑)。



西日本=あったかい、とは限らないので、土地の気候は事前に確認しておくと安心です。
もう一つ、神田さんが準備段階で感じたのが、寮の中の様子を事前に知っておくことの大切さ。「何を持っていけばいいか把握したくて、寮の中の写真が見られると安心でした。1回目は一軒家で個室+水回り共有タイプ、今回はアパートタイプ、と寮の形も場所によって違うので」。共用タイプかアパートタイプか、設備は何があるかを、事前に担当者へ具体的に聞いておくと、持ち物の準備がぐっと楽になります。
2度のリゾートバイトで確信に変わった、「どこでも生きていける」
まだ2週間ながら、そして1回目を含めて振り返ると、リゾートバイトは神田さんの中の“ある感覚”を確かなものにしていました。


── 今回のリゾートバイトで、なにか変化はありましたか?
リゾートバイトをする前から少し思っていたことが、確信に変わったというか。「自分って、割とどこでも生きていけるかも」って思えたんです。もともと住む場所にこだわりはなかったんですけど、より一層、こだわりがなくなった感じです。
「それが最強ですよね」――取材者のその言葉に、神田さんも深くうなずきます。どこへ行っても、知らない土地でも、自分はやっていける。その自信は、人生の選択肢そのものを広げる力になっていました。
── 広島には、また来たいとおもいますか?
ご縁があれば、全然。すごく住みやすそうだなと思います。大崎上島なんて、リゾートバイトじゃなかったら知ることもなかったと思うので。面白い出会いが、いっぱいあるなって。
1回目の宮島でできた友人とは今も連絡を取り合い、11月末までに、宮島からこの島まで遊びに来てくれる約束もしているそう。土地を越えて続く縁もまた、リゾートバイトがくれたもの。「周りにもおすすめしていて、実際に勧めたりもしています」と、神田さんは笑います。
これからリゾートバイトを考えている人へ
── リゾートバイトをやろうか迷っている人に、一言かけるとしたら?
もう、とりあえずやってみたら、という感じです。とりあえず動かないことには何も始まらないので。それで本当に合わなかったら、そのときは無理しなければいいし。頑張れそうだったら頑張ればいい。もうちょっと気楽に考えてもいいんじゃないかな、と思います。
── これだけは準備した方がいい、ということは?
自分が住むところの近くとか、行ける範囲で、楽しみを見つけておくことですね。「このお店気になるな」「このスポット行ってみたいな」「この料理おいしそう」とか。ちょっとした楽しみを見つけておくと、もっと楽しめると思います。あとは、さっきの服の準備も(笑)。
成り行きで選んだ土地が“また来たい場所”になり、ほぼ未経験の調理場が穏やかな居場所になり、2度のリゾートバイトは「どこでも生きていける」という揺るがない自信を神田さんに残しました。最低ラインを想像して飛び込めば、あとはいいギャップばかり――。気楽に、とりあえず一歩。彼女の肩の力の抜けた言葉が、迷っている人の背中をそっと押してくれます。





