ずっと憧れた小笠原 父島で、居酒屋リゾートバイトをした鈴木遥さんの体験談

「リゾートバイトって、お金を貯めるために行くもの」——そんなイメージを持っている人は多いかもしれません。でも今回お話を聞いた鈴木遥さん(30歳)のリゾートバイトは、少し違いました。

きっかけは「ずっと行ってみたかった小笠原に、独身最後の時間を全部使いたい」という強い想い。転職の合間の3ヶ月間を、東京都・小笠原村の父島(ちちじま)で、居酒屋のホールスタッフとして過ごしました。海に潜り、朝日を見に行き、森で光るキノコを探す——。

「正直、しんどかったことはほとんどないんです」と笑う鈴木さん。目的がはっきりしている人にとって、リゾートバイトがどれだけ豊かな時間になり得るのか。そのリアルな声を、たっぷり伺いました。

お名前鈴木 遥さん
年齢・性別30歳・女性
リゾートバイト時期2023年5月〜8月(約3ヶ月間)
エリア東京都 小笠原村・父島
職種居酒屋のホールスタッフ(接客)
働き方週5〜6日勤務/月8日休み(16時〜23時半ごろ)
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目次

きっかけは「ずっと行きたかった小笠原」と、一本の連絡

海が大好きで、これまでも一人で沖縄に出かけるほど遊び回っていたという鈴木さん。数ある候補地のなかで、なぜ「小笠原・父島」だったのでしょうか。

── そもそも、リゾートバイトをしようと思ったきっかけは?

小笠原にはずっと行ってみたくて。でも働いていると、1週間の休みってなかなか取れないんですよね。だから「行くぞ」というタイミングで行かなきゃ、というのがあって。もともと自分が行ってみたいという気持ちが強かったんです。

あと、旅行先で小笠原の話をしている人たちが、みんな目をキラキラさせながらすごく楽しそうに話していて。「こんなに離れているのに、こんなに魅力が溢れる島があるんだ」って。そう思っていたところに、ちょうど海友達が現地にいたんです。もう、全部のタイミングが良かった感じですね。

その友達が父島の居酒屋で働いていて、「人手が足りないからここで働きなよ」と声をかけてくれたのが直接の入口でした。

── 求人サイトから探したわけではなかった?

最初はリゾートバイトのサイトも見たんですよ。でも「働き手が欲しい」というところは日中の勤務が多くて。私はやっぱり海に入りたかったので、それなら友達のところで、という感じでした。

「短期で行くなら、夜だけの求人。検索欄があったら、まず一番最初にそこで探すと思います」

「海が目的の人は、限られた滞在で海を楽しみたいタイプが多いはず」と鈴木さん。日中の自由時間を確保できる夜勤の求人は、目的がはっきりしている人にとって大きな決め手になりそうです。

── 行く前、不安はありましたか?

楽しみな気持ちでワクワクして行った、というのが正直なところです。ただ、当時は同棲していたので、3ヶ月家を空けることへの不安は少しありました。でも「本当に行っちゃうよ?」って、それくらいの感覚で(笑)。小笠原の話を耳にする機会も多かったので、特に不安なく行けた気がします。

お金のリアル:手取りは「栄養士時代とほぼ同じ」

「お金を貯めるため」に行ったわけではない鈴木さんですが、結果的に待遇はかなり良かったといいます。ここは検討中の人が一番気になるところ。具体的に伺いました。

── 時給や手取りは、どれくらいでしたか?

時給はちょっと覚えていないんですが……。もともと栄養士として働いていたので、そのときと手取りがあんまり変わらないな、って思った記憶があるんです。月17〜18万円くらい。日によって変わりますけど、支払いが滞ることもなく、金額は気にしなくていいくらいもらえるな、と分かった上で行きました。

月の手取り約17〜18万円(栄養士時代とほぼ同水準)
勤務日数週5〜6日/月の休みは約8日
勤務時間16時ごろ〜23時半ごろ(実働6〜7時間)
住まい寮あり(家賃負担なし)
食事まかないあり(食費ほぼゼロ)
その他深夜料金あり/3ヶ月以上勤務で船のチケット半額補助

父島には賃貸アパートがそもそも少なく、寮・まかない付きは働くうえで欠かせない条件でした。家賃・食費がかからず、22時以降は深夜料金もつく。「意外と稼げたし、条件がかなり良かったと思います」と振り返ります。

遥さん
寮費は0円で、まかないも出してもらえて。出費は自分の固定費とツアー代、原付のガソリンくらいでした

父島での“ある一日”:午前は海、夕方から仕事

夜勤のリゾートバイトは、日中がまるごと自由時間になります。鈴木さんの一日は、こんな流れでした。

起床(6〜9時ごろ)寮にカーテンがなく、最初は日の出とともに自然に起床。慣れると9時ごろに
午前〜15時ごろ(フリータイム)海で泳ぐ、パン屋、山でトレッキング、半日ツアーに参加など自由に過ごす
16時ごろ出勤。仕事は接客(ホール)が中心で、仕込みには基本ノータッチ
18〜19時ごろ一番の混雑時間帯。以降は飲みに来る常連客でゆるやかに
23時半ごろ退勤・帰寮(深夜まで残ることはほぼなし)

── 自由時間で、特に印象に残っていることは?

半日ツアーだけ行って、そのまま出勤する、みたいな。夢のような時間を過ごしていたなって思います。朝日を見るために一人で細い森を抜けて行ったり。何もかもが特別だったので、何気ないことがすごく楽しかったんです。「特にこれ」というより、全部、という感じですね。

「そんなに体力があったのか分からないけど、疲れも溜まらなかった。アドレナリンが出ていたのかも」と笑う鈴木さん。仕事も飲食店経験があったため大きな戸惑いはなく、店主も常連客も温かく、“健康的な生活リズム”のなかで働けたといいます。

ギャップと、島ならではの“不便さ”

ポジティブな話が続きましたが、離島ならではの現実もありました。鈴木さんが感じたギャップを、正直に聞きました。

── イメージと違ったこと、不便だったことは?

寮はシャワーだけで湯船がなかったですね。あと、島に食料が来ない日があるんです。食料は船(小笠原丸)で運ばれてくるので、台風などで船が来ないと、お店から食材がなくなる。もやしが200円とか、食材が高くて。買おうと思った野菜ジュースが半額になっていたら、賞味期限が2ヶ月切れていた、なんてことも(笑)。そういうのが気になる人は、大変かもしれません。

── 人間関係で気をつけたことは?

小さい島なので、噂話やゴシップが面白おかしく回っちゃうんです。だから3ヶ月という期間で、深くなりすぎず「浅く広く」という付き合い方が一番良かったなと。自分が近づく人、少し距離を置く人を、うまく察知することが大事なのかなと思います。

とはいえ、「これといって大変だった」という印象はほとんどないと鈴木さん。飲食店のアルバイト経験があったこと、店主が良い人で、店が広すぎず、悪酔いする客もいなかったこと——恵まれた環境だったと振り返ります。

「私の思い出が美化されているのかもしれないけど、振り返ってみても、本当にそんな感じなんです」

鈴木さんイチオシ:父島の“海”と“森”

海も森も楽しみ尽くした鈴木さんに、父島でおすすめの場所を教えてもらいました。

── おすすめのスポットは?

港の一番近くにある「製氷海岸(せいひょうかいがん)」ですね。枝サンゴがすごく綺麗で、早朝に入ると朝日がきれいに差し込むんです。サンゴに光が入る感じが本当にきれいで。しかも生き物がたくさんいて、亀が交尾していたり、ハンマーヘッドがビューっといたり。シュノーケルで見られるので、朝行くのがすごくおすすめです。

あと森も面白くて。「グリーンペペ」という光るキノコが見られるんです。昼間に場所を見つけておいて、夜に蛍光グリーンに光っているのを探しに行く。見られる時期や条件もあるので、それを探しに行くのがすごく楽しかったです。小笠原ならではだなって思いました。

小笠原は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる、固有種の宝庫。外来種が少なく、ここでしか出会えない生き物を目当てに訪れる人も多いのだそう。「海も森も、本当に全部楽しかった」という言葉に、その豊かさが表れています。

3ヶ月がくれた「人生で語れるもの」

結婚を意識していた鈴木さんにとって、この3ヶ月はどんな意味を持ったのでしょうか。

── リゾートバイトは、その後の人生にどうつながっていますか?

もう、めちゃくちゃあります。ずっと海が好きで遊び回っていたんですが、結婚して家庭を持つにあたって「これからどうしていこうかな」と思っていて。この3ヶ月が人生で一番楽しかったので、すごく区切りがついたというか。全部やりきった、という感覚になれたんです。

あと、「みんなができない体験をした」というのが自信になっていて。人生の中で、キラキラした感じで語れるものが一つできた。それってすごく素敵だなって思うんです。

「人とのつながりって、こんなにも一人の人生に影響を与えるんだって思いました」

人とのつながりが恋しくなる島だったので、「人っていいな」って改めて思いました。3ヶ月しかいなかったのに、みんなが私をすごく大切にしてくれて。見送りも盛大にやってくれて。その瞬間を大事にしてくれる。だから私も、人と話すときや出会いがあったときに、本当に大切にしようと思える。そんな3ヶ月間でした。

── 今も、当時出会った人とつながっていますか?

めっちゃありますね。今も連絡を取りますし、インスタもほとんど全員つながっているので。「結婚したよ」って報告をもらったり。密に、というわけではないけど、一緒に働いていた子とは今も仲良くしています。3ヶ月で、結構深い仲にまでなれたなと思います。

取材の日は、なんと友人たちが今まさに小笠原に旅行中とのこと。「その動画や写真を見て、私ももう一回絶対行くって思っています」。当時から一度も再訪できていないそうですが、「また仕事を辞めるタイミングかな」と、次を心待ちにしていました。

これからリゾートバイトを考えている人へ

最後に、当時の自分と同じように迷っている人へ——鈴木さんからのメッセージです。

── 行こうか迷っている人に、一言かけるとしたら?

私、その島に行って何が楽しめるかを、めっちゃ調べてから行ったんです。だから行くのがすごく楽しみだったし、より楽しめた感覚があって。沖縄でも白馬でも、働くだけじゃなく「どう楽しめるか」を調べてから行くと、より楽しくなりますよ、って言いたいですね。

鈴木さんは行く前に「やりたいことリスト」を100個も書き出していたそう。結果、その7〜8割を達成できたといいます。目的地への“予習”が、リゾートバイトの満足度を大きく左右する——経験者ならではの説得力ある言葉です。

── これだけは準備しておいた方がいい、ということは?

人間関係のところかな、と。自分が苦しくなるのって、やっぱり周りの人との関係だったりするので。近づく人と、少し距離を置く人を、うまく察知する。そういう力が大事なのかなと思います。

目的がはっきりしているほど、リゾートバイトは豊かな時間になる——鈴木さんの話は、それをまっすぐに伝えてくれました。「行こうかな、どうしようかな」と迷っているなら、まずは“行きたい場所で何をしたいか”を書き出すことから。その一歩が、あなたの人生で語れる一つの物語になるかもしれません。

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